贈与税とは?いくら掛かるか計算してみよう

親戚から多額の資産を譲り受けるかもしれない時や子供の結婚資金を全額自分たちで用意してあげたいと思っている時など、多額の現金や資産の移動が起こりうる際に多くの方が心配することは贈与税についてではないでしょうか。本コラムでは、実際の贈与税額の計算方法や、贈与を受ける際の特例などについて説明していきます。
・手っ取り早く計算したい方は⇛ 贈与税、いくらかかる?

目次
1. 贈与税の概要
2. 贈与税の種類
 2-1. 暦年課税
 2-2. 「特例贈与財産」の税額計算
 2-3. 「一般贈与財産」の税額計算
 2-4. 「一般贈与財産用」と「特例贈与財産用」の両方の計算が必要な場合
 2-5. 相続時精算課税
3. 補足
 3-1. 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除
 3-2. 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
 3-3. 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税
 3-4. 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税
4. まとめ

1. 贈与税の概要

贈与税は、個人から財産をもらったときにかかる税金です。会社などの法人から財産をもらった場合は、贈与税ではなく所得税がかかります。また、自分自身が保険料を負担していない生命保険金を受け取った場合や、債務免除等により利益を受けた場合などは、贈与を受けたとみなされて贈与税がかかります。ただし、死亡した人が自身を被保険者として保険料を負担していた生命保険金を受け取った場合は、贈与税でなく相続税の対象となります。

2. 贈与税の種類

贈与税の課税方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、要件を満たせば「相続時精算課税」を選択することができます。

2.1 暦年課税

贈与税は、1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から、基礎控除額の110万円を差し引いた残額に対してかかります。したがって、1年間に贈与を受けた財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかからず、この場合贈与税の申告は不要となります。

税額の計算

暦年課税の贈与税額は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の価額を合計し、その合計額から基礎控除額110万円を差し引き、その残額に所定の税率を乗じて計算します。贈与税の税率は、以下の通り「一般贈与財産」と「特例贈与財産」に区分されています。

一般贈与財産 特例贈与財産
基礎控除後の課税価格 税率 控除額 基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% 200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円 400万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円 600万円以下 20% 30万円
600万円以下 30% 65万円 1,000万円以下 30% 90万円
1,000万円以下 40% 125万円 1,500万円以下 40% 190万円
1,500万円以下 45% 175万円 3,000万円以下 45% 265万円
3,000万円以下 50% 250万円 4,500万円以下 50% 415万円
3,000万円超 55% 400万円 4,500万円超 55% 640万円

2.2 「特例贈与財産」の税額計算

財産の贈与を受けた年の1月1日現在において18歳以上の人が直系尊属から贈与を受けた場合、この計算方法となります。

Ex.贈与財産の価額が1000万円の場合(「特例税率」を使用)

課税額=贈与財産1000万円-基礎控除額110万円=890万円

贈与税額=課税額890万円×税率30%-控除額90万円=177万円

2.3 「一般贈与財産」の税額計算

特例贈与にあたらない贈与は一般贈与として、この計算方法となります。

Ex.贈与財産の価額が1000万円の場合(「一般税率」を使用)

課税額=贈与財産1000万円-基礎控除額110万円=890万円

贈与税額=課税額890万円×税率40%-控除額125万円=231万円

2.4 「一般贈与財産用」と「特例贈与財産用」の両方の計算が必要な場合

18歳以上の人が、直系尊属と直系尊属以外から贈与を受けた場合などには、次のとおり計算します。

Ex.一般贈与財産が300万円、特例贈与財産が700万円の場合の計算

①. すべての贈与財産を「一般贈与財産」として税額計算します

1000万円-110万円=890万円

890万円×40%-125万円=231万円
(上記の税額のうち、一般贈与財産に対応する税額の計算)

231万円×300万円/(300万円+700万円)=69.3万円…①

②. すべての贈与財産を「特例贈与財産」として税額計算します

1000万円-110万円=890万円

890万円×30%-90万円=177万円
(上記の税額のうち、特例贈与財産に対応する税額の計算)

177万円×300万円/(300万円+700万)=53.1万円…②

③. 贈与税額①一般贈与財産の税額②特例贈与財産の税額

69.3万円53.1万円122.4万円

2.5 相続時精算課税

 相続時精算課税は、原則として60歳以上の父母又は祖父母から、18歳以上の子又は孫に対し財産を贈与した場合に選択できる贈与税の制度です。この制度を選択する場合には、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に贈与税の申告書を提出する必要があります。なお、この制度を選択すると、その選択に係る贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年以降全てこの制度が適用され、暦年課税へ変更することはできません。
また、この制度の贈与者である父母又は祖父母が亡くなった時の相続税の計算上、相続財産の価額にこの制度を適用した贈与財産の価額を加算して相続税額を計算します。このように、相続時精算課税の制度は、贈与税・相続税を通じた課税が行われる制度です。

税額の計算

 相続時精算課税の適用を受ける贈与財産については、その選択をした年以後、相続時精算課税に係る贈与者以外の者からの贈与財産と区分して、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額を基に贈与税額を計算します。その贈与税額は、贈与財産の価額の合計額から、複数年にわたり利用できる特別控除額(限度額2,500万円。前年以前において既にこの特別控除額を控除している場合は、残額が限度額)を控除した後の金額に、一律20%の税率を乗じて算出します。
なお、相続時精算課税を選択した受贈者が、相続時精算課税に係る贈与者以外の者から贈与を受けた財産については、その贈与財産の価額の合計額から暦年課税の贈与税額を計算します。
*相続時精算課税に係る贈与税額を計算する際には、暦年課税の基礎控除額110万円を控除できないため、贈与を受けた財産が110万円以下であっても贈与税の申告をする必要があります。

3. 贈与税に関わる各種特例

ここからは、贈与税に関わる各種の特例制度についていくつか簡単に紹介します。それぞれ細かい要件や対象が決められていますので、深く知りたい方は是非調べてみてください。

3.1 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除

婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除できます。

3.2 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税

平成27年1月1日から令和5年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等の対価にあてるための金銭を取得した場合において、一定の要件を満たすときは非課税限度額までの金額について贈与税が非課税となります。

3.3 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税

平成25年4月1日から令和5年3月31日までの間に30歳未満の方が教育資金に充てるため、金融機関等との一定の契約に基づき受贈者の直系尊属から信託受益権を取得した場合、書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預入をした場合または書面による贈与により取得した金銭等で、証券会社等で有価証券を購入した場合には、その信託受益権または金銭等の価額のうち1,500万円までの金額に相当する部分の価額については、取扱金融機関の営業所等を経由して教育資金非課税申告書を提出することにより、受贈者の贈与税が非課税となります。

3.4 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税

平成27年4月1日から令和5年3月31日までの間に、18歳以上50歳未満の方が、結婚・子育て資金にあてるため、金融機関等との一定の契約に基づき受贈者の直系尊属から信託受益権を付与された場合、書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預入をした場合または書面による贈与により取得した金銭等で、証券会社等で有価証券を購入した場合には、信託受益権または金銭等の価額のうち1,000万円までの金額に相当する部分の価額については、取扱金融機関の営業所等を経由して結婚・子育て資金非課税申告書を提出することにより贈与税が非課税となります。

4. まとめ

 贈与税は、全く関わることの無い方も多い税金ですが、実際に贈与があった際に贈与税についての知識があるかないかでは、贈与税のに大きな差が生まれる場合もあります。誰かに贈与をする予定の方も、誰かから贈与を受ける予定の方も、事前にしっかりと知識を付けておくことをおすすめします。

※2022年7月1日時点の法律を基準としています